「暗記パン」って知ってますか?
漫画「ドラえもん」に出てくる秘密道具の一つで、教科書やノートの内容をパンに転写し、そしてそのパンを食べると瞬時に内容を覚えてしまう便利なパンです。
あいにく、トイレに行ってしまったらきれいサッパリ忘れるみたいでしたけど…
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そんな暗記パン、昔はテストの前日などに「ああ~、暗記パンさえあれば」などとよく無駄な希望を言っていたものです。
さて、そんな便利な道具が無い現実社会では、各種受験や資格試験、果てはスポーツの作戦やサインプレイまで、机にカジリついてでも一生懸命暗記するほかないですね。
皆さん、暗記はどのようにして進めているでしょうか?
この記事ではそんな暗記について、効率よく短期間に憶える方法を私の受験経験も踏まえてご紹介します。
と言ってもそんなに難しいことをやっているわけではありません。
まず皆さん、黄色い細長い果物は「バナナ」って知ってますよね?
誰かに教えてもらったとき、一生懸命覚えましたか?
バナナ、バナナ、バナナと、何度も唱えていましたか?覚えるために何度も紙に書いて覚えましたか?
そんなことしなくても、自然と覚えましたよね?
そしておそらく一生忘れないです。
そうです、これが暗記の極意のヒントなのです。
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暗記は繰り返して脳に刻む
さて、あなたが何故バナナを知っていて忘れないか。
一生懸命覚えようとしたわけでもないのに、なぜ忘れないのか。
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それは、何度もバナナを見て「これはバナナだ」と認識しているからです。
脳に何度も反復で認識させて、記憶に刻み付け続けているからです。
バナナやケーキなど、自然と頭に入ってくる言葉ならば放っておいても頭に入ってきて、そして忘れません。
バナナもケーキも美味しくて、ほとんどの人が好きなものなので興味があって忘れないのです。
だから、興味を持って繰り返せば自然と覚えるし忘れない、と言えますね。
「何だそんなことかよ」とガッカリしないでくださいね。
このことは実は奥が深いのです。
ひたすら覚えたいことをブツブツ唱えるだけでも覚えられますが、もっと効率の良い方法があります。
次から、その記憶のメカニズムと効率的な復習について見ていきます。
記憶の段階
人間の記憶には段階があります。
一般には、短期記憶、中期記憶、長期記憶、などと呼ばれます。
言葉として聞いたことはあるのではないでしょうか。
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例えば、おとといの晩御飯のメニュー、何だったか思い出せますか?
人間は忘れる動物だ、と言われますが、大して重要でないことなら、比較的すぐに忘れます。
これは、短期記憶が中期記憶や長期記憶に移る前に捨てられているのです。
ちょっとメモして用が済んだから丸めて捨てた、ってイメージです。
以下、簡単に説明すると
短期記憶
読んで字のごとく、まさに短期の記憶です。
用済みのメモを捨てるように、「ちょっとの期間だけ覚えている記憶」のことです。
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例えば、ピザのデリバリー頼みたいから、電話番号を調べてダイヤルした。
電話の10分後には忘れてしまっているはずです。
そしてこれら記憶の取捨選択は、海馬という名称の脳の器官が司っています。
海馬とは、脳の器官の名称で、短期記憶したものを残すか捨てるか判断しています。
海馬が「必要」と判断したら中期記憶、長期記憶へと送られます。
高齢者で認知機能が衰えている人は、この海馬の機能が衰えているのだと言われています。
中期記憶
短期記憶が数分で忘れてしまう記憶なのに対して、中期記憶は約1カ月をめどに記憶にとどまっている記憶です。
海馬で「保管が必要」と判断された記憶は、海馬から消える前に脳の倉庫に一旦保存されます。
しかし、しばらくして必要ないと判断されると、廃棄処理されます。
以前、TVドラマで人気だった子役俳優が大学受験を受けるドキュメンタリー番組を観ました。
彼は俳優です。
俳優は仕事柄、セリフを丸暗記して撮影に臨むのですが、彼はセリフを覚えるのが得意だったようで、その要領で大量の英単語や歴史年号を短期間で覚えていました。
彼の勉強を見ていた家庭教師もかなり驚いていました。
しかしその次のタイミングでは、覚えたことをきれいさっぱり忘れていたのでです。
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このことから分かるのは、その子役だった俳優は、中期記憶までの記憶をすることが得意だった、ということです。
受験では入試のタイミングまで、少なくとも半年から1年は記憶を維持しておく必要があり、わずか1か月の中期記憶の段階で忘れてしまっては意味をなさない、ということです。
受験での暗記は長期記憶に刻み込む必要があるのです。
長期記憶
中期記憶の期間の1か月を超えても忘れないで長期に記憶に残している記憶が長期記憶です。
よほどのことが無い限り忘れない記憶であると言えます。
手前味噌になりますが、私はかつて受験勉強をしていた経緯から、英単語や物理の公式、後述する化学の炎色反応の「リアカー無きK村…」の呪文などを、今でもしっかり暗唱できます。
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つまり一旦長期記憶に刻まれてしまえば、数十年経っても忘れない、あるいは少しのキッカケで簡単に記憶を取り戻せるのです。
なので覚えたことが長期記憶に移ったら強いです。
さまざまな記憶法
以下に、受験で使える記憶法についていくつかご紹介します。
これらはいずれも、長期記憶として脳に刻み込むための手段です。
語呂合わせ
歴史年号やら英単語の意味やら、後は化学でもよく使いますね、こんな感じ
- (世界史・年号)意欲に燃えたコロンブス
➡イヨクニ=1492 コロンブスアメリカ大陸上陸 - (英単語)木刀を腰に刺ーすでイ
➡木曜日はThursday - (化学・炎色反応)リアカー無きK村、動力借りるとうするもくれない、馬力
➡Li:赤、Na:黄、K:紫、Cu:緑、Ca:橙、Sr:紅、Ba:黄緑
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一見ヘンな日本語の呪文ですが、これを覚えると二つのものを関連付けて自動的に覚えられるものです。
ただ英単語の場合、発音が無茶苦茶な状態で覚えてしまうので、注意が必要ですね。
英単語以外は呪文を常に唱えれいれば、ほぼ忘れない秀逸な覚え方です。
エピソード記憶
何か物事と関連付けて覚えてしまう手法です。
自分の経験と結びつけてしまうのです。
この経験は、想像でも構いません。
自分の身の回りの出来事を覚えたい事柄に結びつけてしまうことや、好きなアニメやドラマに結びつけてしまうことが、代表的な使い方です。
(例1)高校生のときの実在した野球部の友人〇〇君
「野球がうまくてプロに行っても環境にフィットするだろうから、人生に利益になるなぁ」とエピソードを作り、
profit=利益 と英単語を記憶 しました。
(例2)カメによく似た動物のスッポンは、一度嚙みついたら離さないことを思い出して
スッポンて言いニャースは、噛みついたら自発的には離さない
spontaneous=自発的 と英単語を記憶 しました。
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こんな感じです。話を自分で無理矢理に作り出します。
これは私が大学受験のときによくやっていた方法です。
ストーリーがマズかったり、無理な設定だと覚えていられなかったりするので、よく練って話を作って覚えます。
とにかく、英単語の発音を唱えたらストーリーが出てくるようにブツブツ唱えて覚えます。
手続き記憶
自転車の乗り方やペン回しなど、一度カラダが覚えたら忘れませんよね?
これは手続き記憶といって、言葉ではなくカラダで覚えてしまう方法です。
英単語や漢字はこの方法で覚えます。覚えたいものを何度もひたすら書きます。
小学校のとき、漢字の練習を100回とか書きませんでしたか?
英単語、つづりが思い浮かばないときに発音をしながら、指で空を切って書いた覚えないですか?
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これは手が書き方を覚えているのです。
これが手続き記憶です。
ひたすら書き続けるのも立派な記憶法です。
手続き記憶はアタマよりもカラダで覚えるので、かなりな記憶の定着強度があります。
映像記憶
これは特に左脳では無く右脳を使う記憶方法です。
一般的に言語や理論を司ると言われる左脳で記憶の作業を行いますが、右脳の映像をとらえる分野をうまく利用して、「文字」ではなく「映像」として、認識し記憶します。
この作業はなかなか誰にでもできるわけではありませんが、映像で瞬間的に脳に焼き付けるため、一瞬で記憶できます。
この訓練として手っ取り早いのが「速読」の技術を習得することです。
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速読は、本をパラパラとめくるだけで1冊の本を数分で読んで内容を理解してしまう技術です。
速読も「見る」ことで脳が一瞬のうちに内容を理解認識し、覚えています。
一般的に多くの人は本を読むとき、頭の中で「音読」していますが、目で見てその映像を一瞬で文字認識するので、短時間で認識・理解します。
この「映像で認識する技術」は、私自身が受験生のときから取り入れたいとずっと思っていた技術でした。
この有用性に気付いた時期は、既に受験真っただ中で新たに技術習得をするほどの時間的余裕がなかったため、導入を断念しましたが、もし中高生から人生やり直しができるなら、絶対に取り入れたい技術だと思っています。
これは受験勉強だけでなく、実際の試験本番の限られた時間でも大いにその効果を発揮するでしょう。
速読を受験学習に取り入れている学習塾を紹介します
この速読を私も実体験中です。
エビングハウスの忘却曲線
さて、ここからは記憶の維持と、反復のタイミングについてお話します。
かつてドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスは、自らの記憶力を実験して忘却曲線を提唱しました。
これは、特別な意味を持たない不規則な事柄を覚え、何分か、何時間か、何日かと時が経過して忘れてしまったとき、それを再学習して記憶レベルが元の水準までに達するまでにかかる時間を計測します。
そしてそのために要した時間が前回のからどれだけ短縮できたかを、節約率の指標として数値化したものです。
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少々乱暴ですが、エビングハウスの忘却曲線から読み解くと、
記憶してから1時間したら記憶量は半分となり、1日経ったら4分の1近くにまでなってしまった、と考えられます。
そしてその後は記憶の抜けていく様子は緩やかなものになります。
しかし別の実験では、1カ月を超えるとほとんどの記憶内容が失われていた、との報告もありました。
海馬にあった短期記憶が時間とともに捨て去られて、1日で4分の1までが失われた。
残りの25%は中期記憶に移行しているようだが、1カ月もするとほとんどが失われる恐れがある、と言えます。
中期記憶から長期記憶に移行しきれていないと考えれば、1か月しか寿命が持たないことの説明がつくかもしれません。
そしてこの忘却曲線から、一度覚えた内容をどのタイミングで反復すれば、さらに強固な記憶として定着できるかの基準時間を推測することができます。
復習のタイミングと手法
前段で紹介したように、エビングハウスの忘却曲線では、全く関連性を持たない事柄を覚えたとき、1時間で約55%、1日で約75%もの記憶量が消えていました。
せっかく覚えたものが、わずか1日で4分の1になってしまうのは非常にショッキングな話ですね。
前述の関連付けの記憶法も利用しながら記憶し、1時間⇒1日⇒1週間、と軽い目の復習を繰り返すのがおススメです。
復習をする際は、まだ忘れていないことも多く、「あ、そうだった」とばかりに学習の進行も速いはずです。
この、忘れる前の復習、補完が、非常に重要です。
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忘れる前の復習は見て読むことが中心になるので、時と場所の自由度が高いです。
通勤通学の時間や、ちょっとした細切れの時間に内容を決めて行いましょう。
最近では単語帳などを使わなくても、スマホで便利なアプリがたくさん出回っています。
「今日の通学時間20分の間に、先週の20個を再確認しよう」
こういった繰り返しで、短期記憶を中期記憶から長期記憶に移行して、強固な知識の記憶として言ってください。
まとめ
私が受験生だった頃には、これらの方法論があまり出回っていませんでした。
インターネットもなく、スマホなどの便利な機器も存在しなかったので、すべて手探りで暗記方法を探していました。
そのため無駄なことをやりすぎていたのか、数十年経っても受験のときの記憶があるのは、実は恥ずかしいのですが、それだけやり尽くしているとも思っています。
昔から、とにかく繰り返して学習すること、それもタイミングなど関係なく、覚えるまで繰り返すことが重要と言われていましたが、エビングハウスの忘却曲線の理屈を知っていれば、もう少し無駄なく復習を進めることができたのかも知れません。
私の経験上、受験勉強はとにかくどれだけ効率的な時間を机に向かって過ごせたかが、ほぼすべてを左右すると思っていますので、効率的に暗記し忘れないように復習する。つまり長期記憶に移行させることが最重要です。
→→→ 効率的に集中する方法
皆、同じ環境同じ条件で学習しているので、最後の最後まであきらめずに反復学習を繰り返して栄光をつかみ取って欲しいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ー了ー
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